8月生まれの妻と息子、二人分の誕生日祝いに、ソリハルのタッチウッド近くにあるブラジリアンシュラスコ(ロディジオ)専門店「Beleza Rodizio Solihull」を予約しました。三人で£101。決して安い金額ではありませんが、家族で顔を見合わせながら心ゆくまで肉を頬張った時間は、値段以上のものを持ち帰らせてくれました。

シュラスコの起源は、ブラジル南部の牧童(ガウチョ)たちが、放牧の合間に串刺しにした肉を焚き火で焼いて食べた習慣にあるといわれています。もともとは仲間内で肉を分け合う、素朴な野外の食事でした。それが都市部でレストラン化し、今では英国でもロディジオ専門店が少しずつ増えています。日本の焼肉やすき焼きが、家族や仲間で鍋や網を囲んで肉を分け合う文化であることを思うと、国は違っても「肉を分け合う場」が人と人をつなぐ役割を果たすのは、どこか人間の本性に近いものがあるのかもしれません。

タッチウッドすぐ近く、雄牛のロゴが目印の入り口 タッチウッドすぐ近く、雄牛のロゴが目印の入り口。予約なしで訪れる勇気が湧く外観です。

シックで洗練されたモダンな店内デザイン

一歩足を踏み入れると、「賑やかなバイキング」というより、落ち着いたレストランの雰囲気が広がっていました。天井から吊るされた緑と花の装飾、ダークトーンを基調とした照明——誕生日のような特別な日に足を運ぶのにふさわしい空間です。

シックで洗練されたモダンな店内デザイン 一般的な「食べ放題」のイメージを覆す、落ち着いた内装。

システムと楽しみ方:卓上サインブロックで自分のペースをコントロール

席に着くと、赤と青、二色に塗り分けられた小さな木製のブロックが渡されました。カードではなく、くるりと向きを変えるだけの立体的な仕組みです。青を上にしておけば、パサドール(お肉を切り分けてくれるスタッフ)が次々とやってきます。赤を上にすれば、「少し休憩」「もうお腹いっぱい」のサイン。パサドールは黙って素通りしてくれます。

このブロック一つで、食べる量もペースも自分で決められる——なんでもない仕組みですが、日本語にはちょうどいい言葉があります。「間(ま)」です。何もない空白の時間や距離が、実はその場全体の心地よさを決めている。赤を上にして少し息をつく数分間こそが、次の一皿をより美味しくしているのだと思いました。

そういえば、一度向きを決めてしまえば、あとはいちいち指示を出さなくとも望み通りに動いてくれる——この仕組みは、Claude Codeに一度ルールを教え込んでおけば、あとは黙って淡々と働いてくれるのに、少し似ている気がしました。66歳になってなお新しい技術に触れる機会が増えた今だからこそ、こんな食事の場にも重なりを見つけてしまうのかもしれません。

卓上サインブロック 青は「もっとどうぞ」、赤は「少し休憩」の合図。

絶品!炭火でじっくり焼き上げた肉のラインナップ

パサドールが串を手に、目の前で一枚ずつ切り分けてくれるライブ感は、何度体験しても心が浮き立ちます。定番のピカーニャ(Picanha)は、脂身が香ばしく炙られ、赤身の旨味がしっかりと感じられました。

医学部で学んでいた頃、タンパク質の代謝や筋肉の材料になる仕組みを教わりました。あの頃はただの試験勉強でしたが、66歳になった今、こうして噛みしめる一枚の肉が、まさに自分の体をつくり直している——そう思うと、教科書の中の知識が、目の前の皿の上で急に生きた実感を持って迫ってきます。

目の前で一枚ずつ切り分けてもらえる、ライブ感のある提供スタイル 目の前で一枚ずつ切り分けてもらえる、ライブ感のある提供スタイル。

牛肉のランプ(Alcatra)やチーズをまとわせたステーキ(Bife de Queijo)のほかにも、香辛料の効いたブラジリアンソーセージ(Linguiça)、ほんのり甘いハニーポーク(Porco com Mel)、柔らかなラム(Cordeiro)など、多彩な部位が巡回してきます。合間に運ばれてくるシナモンシュガーの串焼きパイナップル(Abacaxi com Canela)は、口の中をさっぱりとリセットしてくれる嬉しい一品でした。

アバカシ・コン・カネラ アバカシ・コン・カネラ。肉の合間の、甘くさっぱりとした一息。

肉だけじゃない!クオリティの高いグルメサラダバー

「肉ばかりで途中で飽きるのでは」という心配は無用でした。中央のサラダバーには、黒豆の煮込み(フェジョアーダ)とライス、ひよこ豆とツナのサラダ、ゆで卵、チェダーやブルーチーズなど数種のチーズ、彩り野菜のピクルスまで、サイドディッシュだけでも十分満足できるほどの充実ぶりです。

サラダバーの全景 カウンターいっぱいに並ぶサラダバー。何から取ろうか、目移りしてしまいます。

自分の手で一皿を組み立てる楽しさもありました。

彩り豊かなサラダバーの一角 黒豆とライス、チーズ、ピクルス野菜——サイドだけでも満足できる充実ぶり。

Beleza Rodizioを100%楽しむための3つのポイント

  • 昼と夜でメニューと価格が変わります(ランチ:月〜木£29.95/金〜日£35.95、ディナー:月〜木£45.95/金〜日£49.95)。フィレやランプステーキなど夜限定の部位もあるため、しっかり楽しみたいならディナーがおすすめです
  • お肉は控えめでよいという方には、サラダバーとホットディッシュのみの「Market Table」(£19.95)という選択肢もあります
  • 金・土・日は混みやすいため、オンライン予約が安心です
  • 想像以上にお腹がいっぱいになるので、当日のランチは軽めにしておくのが鉄則です

分け合う時間、噛みしめる今

正直なところ、三人で£101という金額は、年金生活の身にはそれなりの出費です。それでも足を運んだのは、お金には換えられないものがそこにあったからだと思います。妻と息子、それぞれの一年に一度の日を、こうして顔を合わせて祝えること自体が、もう十分に贅沢なのです。

若い頃は、肉の一切れをここまで意識して噛みしめることはありませんでした。年齢を重ねると、噛む力も飲み込む力も、いずれ少しずつ変わっていくのだと聞きます。だからこそ、こうして今、思い切り肉を頬張れる一日一日を、当たり前のことと思わずに味わっておきたいと感じました。翌朝は少し胃を休め、足三里に千年灸を据えて、体をいたわる時間を持ちました。庭では、肉づくしの翌日にふと、あっさりとしたラズベリーの甘みが恋しくなったのも、正直な発見でした。

帰宅すると、メグ(我が家のラグドール)が、私の服にしみついた肉の匂いに気づいたのか、いつになく熱心に足元にすり寄ってきました。人間も猫も、生きているものはやはり「生」の匂いに敏感なのかもしれません。

私はただ自分の記録を書いているだけですが、それが誰かの隣を静かに歩く時間になっていたら嬉しく思います。

ほかにも、こんな本があります

よろしければ、こちらもご覧いただけると嬉しいです。

『東から西へ ― 俳句のこころ、聖書のひかり ―』(村井弘 著)

家族で顔を見合わせながら食事を分け合う時間の尊さを綴った本作にちなんで。これは私の義父の遺作です。

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『白内障手術体験記 ― 英国在住者が大阪で自費手術を受ける』(南晴人 著)

大阪とイギリスを行き来する暮らしの記録として、よろしければあわせてどうぞ。

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『英国寿司ビジネス奮闘記(小説版)』全4巻(南晴人 著)

29歳でロンドンへ渡り、寿司ひとすじに35年。見習いから工場長、そして寿司教室までを描いた小説シリーズです。

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店舗情報

  • 店名:Beleza Rodizio Solihull
  • 住所:2-3 Solihull Retail Park(タッチウッド周辺、ソリハル中心部)
  • スタイル:ブラジリアン・シュラスコ(ロディジオ)
  • 公式HP:https://www.belezarodizio.co.uk/