🎧 対談で聴く(二人が語り合う、この記事の感想・解説)

この音声は、本文の内容をもとにGoogle NotebookLM(Gemini)が生成したAI音声解説です。二人のキャスターが感想や解説を交えて語り合う対談形式の音声で、本文をそのまま読み上げるものではありません。

私はこのたび、66歳で受けた両眼の白内障手術の体験を一冊にまとめ、『白内障手術体験記 ― 英国在住者が大阪で自費手術を受ける』としてKindleで出版しました(著者名「南 晴人」は私のペンネームです)。医学書ではなく、英国在住の年金生活者である私が、大阪で自費手術を受けるまでの医師選び・レンズ選び・費用(両眼で130万円弱)を、包み隠さず記録した体験記です。このブログでいつも書いている「本から得たヒントを、自分の暮らしでどう実践したか」の記録の一つとして、今日はその中身をご紹介します。

「眼鏡が作れません」と言われた日

きっかけは、ごく些細なことでした。近所の眼鏡屋さんで眼鏡を新調しようとしただけなのです。ところが返ってきたのは、「眼科で処方箋をもらってきてください」という言葉でした。

眼鏡をかけても視界が白っぽくかすむ。片目ずつ見ると、左右で明らかに見え方が違う。街灯が二重、三重ににじむ。そうした症状はありましたが、私はそれを「眼鏡を変えれば済むこと」だと信じていました。12、3歳で初めて眼鏡をかけてから55年近く、ずっとそうしてきたのですから。

これまで一度も医者にかかったことのない私にとって、これはまさに寝耳に水でした。老いは、こういう形で、ある日突然、日常の入口にやってくるのだと思い知らされました。

本書の中身 ― 五つの章でたどる一年

第1章は、クリニックを決めるまでです。まず白内障の本を5冊取り寄せて読み、手術の全体像とレンズの種類をつかみました。しかし本もホームページも、肝心の「手術をしてくださる先生の素顔」までは教えてくれません。命の次に大切な視力を預けるのに、その決心がつかない。行き詰まった私が最後に頼ったのはYouTubeでした。画面の中で自分の言葉で語る医師の姿は、口コミの星の数よりもよほど信頼できる判断材料でした。こうして、大阪府泉南郡熊取町の南大阪アイクリニック・渡邊敬三先生にお願いすることを決めます。決め手になったのは、手術実績も費用も機器もすべて公開されている、その透明さでした。

第2章は、手術日までの3週間です。私はこの期間を「体を整える期間」と位置づけました。レンズはアルコン社のVivity Toric(ビビティ・トーリック)を選択。カタログの性能比較からではなく、「自分は一日のうち、どの距離をいちばん長く見ているか」という問いから選びました。答えはパソコンの画面でした。並行して、血圧を下げ、飲んでいるサプリメントと漢方を総点検し、術前に中止すべきものを一つずつ確認していきました。

第3章は、手術当日です。点眼麻酔なので、先生とは会話ができます。自分の水晶体が砕かれていく音を、私はかすかに聞き取りました。体がこわばったその瞬間、「今までいろんな世界を見せてくれてありがとう」と、心の中で水晶体にお礼を言っている自分がいました。この一節を書けただけでも、本にした甲斐があったと思っています。

第4章は、術後3ヶ月。目薬、食事、照明、眠り、寝る向き。手術が終わっても、そこからが「新しい目の取扱説明書」を自分で一枚ずつ書いていく日々でした。

第5章は、その後。術後3ヶ月で英国に戻り、まぶしさという新しい個性との付き合いが始まります。夜の運転、庭仕事、パソコン作業。それぞれに合う眼鏡を選び直した数ヶ月でした。

目の断面図(手術前の濁った水晶体/手術後の眼内レンズ)

お金の話を、いちばん正直に書きました

本書でいちばん力を入れたのは、費用の記述です。

私が選んだ「ビビティ乱視用」は選定療養で片眼451,000円(税込)。私は全額自費でしたので、手術代・診察代・薬代まで含めて、両眼で130万円弱かかりました。正直、高いと感じました。年金生活者にとって、軽い金額ではありません。

それでも支払うと決められたのは、こう考えたからです。この目は、これから毎朝目覚めてから夜眠るまで、景色を、画面を、妻の顔を見続けてくれる相棒です。だとすれば、これは残りの人生への投資ではないか、と。

お金の心配をなくす方法は、貯めることだけではないのだと思います。何にいくらかかるのかを事前に正確に知り、自分の価値観と照らして納得して払う。その手順を踏めたとき、同じ金額でも不安ではなく納得に変わりました。だからこそ本書には、金額も、内訳も、そして英国で同じレンズを入れた場合の相場(両眼でおよそ153万〜192万円)まで書きました。日英を行き来する暮らしをしていなければ、比べようのなかった数字です。

「調べて、納得して、医師に確認する」という三段構え

本書を貫いているのは、この三段構えです。

本を読み、AIに質問し、根拠を理解する。しかし最後の判断は、必ず医師に委ねる。調べた結果が「問題なし」でも、術前診察では飲んでいるものをすべて申告する。この順番を守ったことが、いちばんの安心につながりました。

思わぬ落とし穴もありました。タイ旅行で買ったハーブオイルです。何気なく成分を調べたら、メントールとユーカリオイルが高濃度で入っていて、気化した成分が目を刺激する恐れがあると分かりました。飲むものだけでなく、肌に塗るもの、香りとして吸い込むものまで目に届く。調べなければ、まず気づかなかったことです。

情報を包み隠さず出してくれる医師と、自分でも調べる患者。善さというのは、案外そういう地味な誠実さの積み重ねの中にあるのかもしれない――取材ではなく自分の身で体験しながら、そんなことを考えていました。

体は、いくつになっても応えてくれる

準備を始めた1月中旬、私の血圧は150/95前後でした。お世辞にも良い数値ではありません。

そこで禁酒し、サウナに通い、有機トマトジュースを毎日の習慣にし、以前から服用していた漢方を続けました。朝晩の血圧測定も日課にしました。すると3週間後、手術前日の記録は116/79になっていたのです。

手術までの3週間の血圧の推移グラフ

一つひとつは、ごく地味なことばかりです。それでも積み重ねが、これほどはっきり数字に表れるとは思っていませんでした。66歳になっても、体はちゃんと応えてくれる。健康寿命という言葉を、私はこのとき初めて、統計ではなく自分の実感として理解した気がします。手術は、生活を根こそぎ見直す絶好の口実でもありました。

老いを、もう一度読み直す

手術の翌日、眼帯を外してもらった瞬間のことは忘れられません。まだ片目だけだというのに、壁のポスターも、スタッフの方の顔も、くっきり見えるのです。今まで自分がどれほど見えていなかったのかを痛感しました。

そして不思議なことに、その視界がどこか懐かしいのです。もしかすると、まだ眼鏡をかける前の、幼い頃に見ていた世界に似ているのかもしれない――そんな空想をしました。

老いは失っていく一方だと思い込んでいましたが、そうとも限らないようです。取り戻せるものもある。ただし、取り戻した先には、まぶしさという新しい課題が待っていて、それとも付き合っていかなければならない。手術はゴールではなく、目と長く付き合っていくためのスタートでした。老いとは、そういう終わりのない編集作業なのかもしれません。

準備一色だった1月の終わり、私は思い立って奈良の飛火野へ「鹿寄せ」を見に行きました。ナチュラルホルンの音が冬枯れの森に響くと、森の奥から鹿が一頭、また一頭と駆けてきます。あのとき私の目には、まだ薄い曇りがかかっていました。「手術が終わったら、この景色はもっと鮮やかに見えるのだろうか」。緊張の合間に置いたその半日が、いま思えば、いちばん「今を生きて」いた時間だったように思います。

冬の朝の飛火野、鹿寄せのイラスト

こんな方に読んでいただけたら

  • 「白内障ですね」と言われて、これからどうなるのか不安な方
  • 単焦点か、多焦点か、EDOFか。レンズ選びで迷っている方
  • 実際いくらかかるのか、具体的な金額を知りたい方
  • 海外にお住まいで、日本で手術を受けることを検討されている方
  • ご家族の手術に付き添う立場の方

医学書にも、行政のパンフレットにも載っていない種類の情報を残したい、というのが執筆の動機でした。統計の平均値ではなく、一人の生活者が実際に何を調べ、いくら払い、何に戸惑ったか。そういう記録です。

かつての私のように「矯正視力が出ません」と言われて途方に暮れている方が、どこかでこの本を開いて、「同じ道を通った人がいる」と思ってくださったなら、それだけで書いた意味があります。

おわりに ― 見えることは、今を生きること

いま、庭のバラの花びらの一枚一枚が見えます。温室のトマトの産毛まで見えます。英国へ戻る機内から見下ろした雲海は、以前より白く、くっきりしていました。

記憶力も体力も落ちていく年齢ですが、書くことで人生を編集し続けることはできる。この一冊を仕上げてみて、そう感じています。もしよろしければ、手に取っていただけたら嬉しいです。

白内障手術体験記 ― 英国在住者が大阪で自費手術を受ける(南 晴人 著/Kindle版)

なお本書は一個人の体験記であり、医学的助言に代わるものではありません。治療方針やレンズの選択、サプリメントの使用などは、必ず担当の医師にご相談ください。

(本サイトはAmazon.co.jpを宣伝しリンクすることによって紹介料を獲得できるAmazonアソシエイト・プログラムの参加者です)

ほかにも、こんな本があります

よろしければ、こちらもご覧いただけると嬉しいです。

『東から西へ ― 俳句のこころ、聖書のひかり ―』(村井弘 著)

俳句のことばと聖書の光を行き来しながら、東と西の精神性を静かに見つめたエッセイです。日本の詩情と聖書の世界が、思いがけないところで響き合う一冊です。これは私の義父の遺作です。

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『英国寿司ビジネス奮闘記(小説版)』全4巻(南晴人 著)

29歳でロンドンへ渡り、寿司ひとすじに35年。見習いから工場長、そして寿司教室までを描いた小説シリーズです。

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本文で触れた目薬や照明、眼鏡などの具体的な製品は、こちらのページにまとめました。選んだ理由や使ってみた実感も添えています。


著者について(南 晴人)

南 晴人(みなみ はると)は、私のペンネームです。1960年、北海道生まれ。国立大学医学部で5年間、西洋医学を学ぶ。英国で30年以上にわたり事業に携わる。その傍ら英国の大学で鍼灸の学位と漢方の大学院ディプロマを取得し、東洋医学のクリニックを営む。65歳でリタイア。現在は冬を日本、それ以外の季節を英国で過ごす2拠点生活を送りながら、旅、家庭菜園、健康長寿をテーマにバイリンガルブログ adventures-after60.com を執筆している。