対応:2026年8月号<第一部>⑤
先日、中南米で立て続けに起きた政変について解説した対談を聞く機会がありました。北野幸伯さんとの対談で、ベネズエラ、キューバ、コロンビア、ペルーという4カ国を舞台に、トランプ政権の「ドンロー主義(新モンロー主義)」がどう展開しているかを読み解く内容でした。
※本記事は、ダイレクト出版が運営するサブスクリプション「パワーゲーム」内で配信された、北野幸伯さんとの対談(有料コンテンツ)を私が購入し、そこから触発されて書いた個人的な感想・考察です。北野さんのホームページは rpejournal.com です。
このシリーズの記事
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南米大陸が写った地球儀(写真: Colin White / Unsplash)。ベネズエラ・コロンビア・ペルーと、中南米各国で相次いだ政変を思い浮かべながら選びました。
「ドンロー主義」というキーワード
対談ではまず、2025年12月にトランプ政権が発表した国家安全保障戦略の骨子が紹介されていました。「モンロー主義への回帰」「ロシアとは和解の方向」「中国は脅威ではなく競争相手」という3本柱です。中でも「モンロー主義への回帰」は、ドナルド・トランプの「ドン」とモンロー主義を掛け合わせて「ドンロー主義」と呼ばれているそうです。西半球・中南米はアメリカの縄張りであり、他国(特に中国)の介入を許さない、という方針です。
前回の記事で書いた米イラン合意覚書の一件は「トランプの完敗」と評されていましたが、今回はその裏側で、中南米において着実に成果を上げている、という対比が印象的でした。
4カ国で相次いだ政変
対談で紹介されていた展開は、次のようなものでした。
今年1月、米軍がベネズエラに侵攻し、反米・親中路線を取っていたマドゥロ大統領を拘束。後任の副大統領に「石油権益をアメリカに譲渡すること」「中国企業を排除すること」を条件に政権運営を認めさせ、一夜にして親米路線へと転換させました。
続いてキューバへは、ベネズエラからの石油供給を止めるという経済的な圧力をかけ、さらに5月には、キューバ革命の指導者フィデル・カストロの弟であるラウル・カストロ氏を、1996年の民間機撃墜事件に関連して米連邦地裁が殺人罪で起訴しました。
6月には、コロンビアとペルーでも政権交代が起きています。コロンビアでは、中国の「一帯一路」に傾倒していた左派政権が敗れ、親米派の右派候補が僅差で勝利しました。ペルーでは、親中派だった大統領が汚職事件で失脚し、その後の選挙で、日系のケイコ・フジモリ氏が4回目の挑戦にして悲願の初当選を果たしました。
対談の中で特に印象に残ったのは、ペルーの一件です。中国はペルーに「チャンカイ港」という巨大港湾を、投資額にして3,500億円規模、権益の60%を握る形で建設していました。開港式には習近平国家主席自らが出席したほどの、力の入ったプロジェクトだったといいます。そこに親米・親日路線への転換が起きたことは、この地域の力学が大きく揺れ動いていることを示しているように感じました。
リタイア生活者として、何を考えたか
資源国の政変は、意外と身近な話につながる。 ベネズエラは世界有数の石油埋蔵量を持つ国です。そこでの政変や、キューバへのエネルギー供給停止といった動きは、直接の投資対象でなくても、巡り巡って原油価格や世界経済に影響を及ぼします。中東だけでなく、中南米の情勢もエネルギー価格の変動要因として、頭の片隅に入れておく必要がありそうです。
巨大インフラ投資も、政権交代一つで前提が変わる。 ペルーのチャンカイ港のように、他国が巨額を投じたインフラであっても、政権が変わればその位置づけは大きく揺らぎます。特定の国のインフラ投資や関連企業に資産を置く場合、その国の政治体制がどれだけ安定しているかも、無視できない要素なのだと改めて感じました。
「勢い」がある陣営にも、危うさは潜んでいる。 前回の記事では「トランプの完敗」という評価を扱いましたが、今回は一転して「トランプの成功」の側面が語られていました。同じ政権の同じ時期の話でも、地域が変わればまるで評価が逆転する。これは、ニュースの一部分だけを見て「この政権はもうダメだ」「この政権は盤石だ」と判断することの危うさを教えてくれます。資産運用でも、一つの情報だけで全体を判断せず、複数の側面から見る癖をつけておきたいと思いました。
おわりに
同じ対談シリーズの中で、「完敗」と「成功」という正反対の評価が、同じ政権について語られていたのが、今回一番印象に残った点でした。世界情勢を追いかけるときは、一つの地域・一つの出来事だけで全体像を判断せず、複数の視点を持っておくことの大切さを、改めて教えられた気がします。
ほかにも、こんな本があります
よろしければ、こちらもご覧いただけると嬉しいです。
『東から西へ ― 俳句のこころ、聖書のひかり ―』
「一つの視点だけで判断しない」という今回の話の締めくくりに、静かな言葉であらためて開きたくなる一冊です。これは私の義父の遺作です。
Amazonで見る出典について
本記事は、ダイレクト出版が運営するサブスクリプション「パワーゲーム」内で配信された、北野幸伯さんとの対談(有料コンテンツ)を私が購入し、そこから触発されて書いた個人的な感想・考察です。対談内容そのものの転載ではなく、あくまで私自身の視点でまとめたものである点、ご了承ください。
北野幸伯さんについて 国際政治アナリスト。ロシア(モスクワ)留学の経験を持ち、「国家戦略」「地政学」の視点から世界情勢を読み解くメールマガジン・書籍を多数発信。ダイレクト出版のサブスクリプション「パワーゲーム」のメイン講師も務める。 ホームページ:rpejournal.com
北野さんが講師を務める「パワーゲーム」講座の詳細はこちらです。
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