対応:2026年8月号<第四部>「パワーゲームマンスリーミッション」「先月の回答のレビュー」

今回はこれまでと少し形式の異なる回です。北野幸伯さんの対談ではなく、同じ「パワーゲーム」内の「月例ミッション」というコーナーで、リスナーからの投稿をもとに、日本の少子化・人口減少について話し合われていた回を取り上げます。2025年の年間出生数が67万人まで減少したというニュースを受けて、複数のリスナーからの提言が紹介されていました。

※本記事は、ダイレクト出版が運営するサブスクリプション「パワーゲーム」内で配信された、読者投稿への回答コーナー(有料コンテンツ)を私が購入し、そこから触発されて書いた個人的な感想・考察です。番組の司会・進行は北野幸伯さんです。北野さんのホームページは rpejournal.com です。

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赤ちゃんを抱く女性

赤ちゃんを抱く女性(写真: Kazuo Ota / Unsplash)。少子化と高齢者雇用という、世代をまたぐテーマを思い浮かべながら選びました。

67万人という数字

2025年の年間出生数が67万1,236人となり、10年連続で過去最少を更新した、というニュースがありました。かつては100万人を超えていた出生数が、ここまで減っている。番組では、このニュースを受けて「人口減少によって日本社会が最も大きく変わる分野は何か」というテーマで、リスナーからの提言が紹介されていました。

いくつか印象に残った意見を、簡単にご紹介します。

一次産業や医療・介護など、人手が必要な分野に手厚い所得補償を行うべきだという意見。安易に低賃金の外国人労働者に頼るのではなく、賃金を適正に引き上げ、日本人が働きやすい環境を整えるべきだという意見。少子化が進めば自衛隊員の確保も難しくなり、安全保障そのものが揺らぐという指摘。AIやロボットとの共生を前提に、物流・介護・行政手続きなど社会インフラ全体を再設計すべきだという提言。そして、昭和型の拡大成長モデルから脱却し、江戸時代のような循環型・地域密着型の「ウェルビーイング社会」を目指すべきだという意見もありました。

いずれも、司会者と北野さんが評価やコメントを添えながら紹介する形式で進んでいました。

66歳の私が、一番食いついたのは

正直に言うと、これらの提言の中で、私が一番自分ごととして聞き入ってしまったのは、「高齢者が元気で働き続けられる社会を作り、定年制を廃止すべきだ」という提言でした。

昨年65歳でリタイアした私にとって、「定年制の是非」というテーマは、まさに自分の人生の選択と重なる話です。番組では、政治が高齢者の票ばかりを気にする「シルバー民主主義」からの脱却と、若い世代・子育て世代への投資を本気で進める必要がある、という文脈で語られていましたが、その中で語られる「高齢者の活躍」という言葉には、複雑な気持ちも湧きました。

私自身はリタイアという選択をしましたが、それは「働けなくなったから」ではなく、「これまでの日本食ビジネス・鍼灸漢方クリニックの仕事に区切りをつけ、次の生き方を選んだ」という感覚に近いものです。もし「定年制がなくなり、高齢者も当然のように働き続ける社会」になったとしたら、リタイアという選択そのものが、少し肩身の狭いものになってしまうのだろうか。そんなことも、ふと考えてしまいました。

リタイア生活者として、何を考えたか

「働き続ける」と「リタイアする」は、対立する話ではないはず。 定年制の撤廃という提言は、「高齢者は働くべきだ」という圧力ではなく、「働きたい人が、年齢を理由に選択肢を狭められない社会」を目指すものだと理解しています。その上で大切なのは、リタイアという選択もまた、尊重される社会であってほしいということです。働き続けることも、リタイアして違う形で社会と関わることも、どちらも等しく認められる。そんな柔軟さが、少子高齢化が進む日本には、ますます必要になってくるのだと思います。

外国人労働者を巡る議論は、感情論より制度設計の議論を。 安易な低賃金労働力への依存に警鐘を鳴らす意見が紹介されていましたが、この論点は、賛否含めて様々な立場があるテーマだと感じています。外国人労働者の受け入れをどう設計するかは、感情的な議論ではなく、賃金水準・労働環境・社会保障制度をどう整えるかという、制度設計の問題として捉える必要があるように思います。

「小さくとも豊かな国」という視点は、老後の暮らし方にも重なる。 江戸時代の循環型社会に学ぶ、という提言には、個人的に共感する部分がありました。拡大成長を追い求めるのではなく、地域コミュニティとリサイクルを軸にした暮らし方。これは国全体の話であると同時に、家庭菜園やご近所付き合いを大切にする、私自身の老後の暮らし方の指針とも重なるように感じています。

おわりに

67万人という数字から始まった対談でしたが、聞き終えてみると、一番自分に刺さったのは「定年制」というテーマでした。少子高齢化の議論は、どうしても「支える側・支えられる側」という構図で語られがちですが、当事者の一人として、これからも自分なりの向き合い方を考えていきたいと思います。

ほかにも、こんな本があります

よろしければ、こちらもご覧いただけると嬉しいです。

『東から西へ ― 俳句のこころ、聖書のひかり ―』(村井弘 著)

「定年制」というテーマを自分ごととして考えたあとで、静かな言葉に立ち返りたくなったときに開いている一冊です。これは私の義父の遺作です。

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『白内障手術体験記 ― 英国在住者が大阪で自費手術を受ける』(南晴人 著)

こちらも、66歳になってから経験した、暮らしの節目の記録です。

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『英国寿司ビジネス奮闘記(小説版)』全4巻(南晴人 著)

29歳でロンドンへ渡り、寿司ひとすじに35年。見習いから工場長、そして寿司教室までを描いた小説シリーズです。

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出典について

本記事は、ダイレクト出版が運営するサブスクリプション「パワーゲーム」内で配信された、読者投稿への回答コーナー(有料コンテンツ、司会:北野幸伯さん)を私が購入し、そこから触発されて書いた個人的な感想・考察です。番組内容そのものの転載ではなく、あくまで私自身の視点でまとめたものである点、ご了承ください。

北野幸伯さんについて 国際政治アナリスト。ロシア(モスクワ)留学の経験を持ち、「国家戦略」「地政学」の視点から世界情勢を読み解くメールマガジン・書籍を多数発信。ダイレクト出版のサブスクリプション「パワーゲーム」のメイン講師も務める。 ホームページ:rpejournal.com

『[新版]日本の地政学 (扶桑社BOOKS) 北野 幸伯 (著)』 キンドル版はこちら 単行本はこちら

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