対応:2026年8月号<第三部>①

先日、アメリカ、ロシア、ヨーロッパの首脳が相次いで北京を訪問している現象について解説した対談を聞く機会がありました。北野幸伯さんとの対談で、各国がなぜこれほど中国に接近しているのか、その裏側にある事情を読み解く内容でした。

※本記事は、ダイレクト出版が運営するサブスクリプション「パワーゲーム」内で配信された、北野幸伯さんとの対談(有料コンテンツ)を私が購入し、そこから触発されて書いた個人的な感想・考察です。北野さんのホームページは rpejournal.com です。

このシリーズの記事

北京・紫禁城の太和殿前に立つ守護獅子の像

紫禁城・太和殿前の守護獅子像(写真: Rafik Wahba / Unsplash)。世界の主要国首脳が次々と北京を訪れる様子を、この一枚に重ねてみました。

「崇敬」ではなく「弱み」だった

対談の冒頭、聞き手の方が「主要国の首脳が次々と北京を訪問する様子は、まるで昔の中華朝貢外交のようだ」と表現していたのが印象的でした。習近平氏からすれば「蛮族の王たちが皇帝に挨拶に来ている」ように見えるかもしれない、というのです。

しかし対談を聞き進めると、各国が中国に接近しているのは、決して習近平体制を慕っているからではなく、それぞれの国が抱える切実な弱みによるものだと分かります。

アメリカは、ハイテク・軍事・エネルギー産業に不可欠なレアアース(希土類)を中国に依存しており、供給停止という「カード」を恐れている。脱依存の取り組みを進めてはいるものの、実現には数年単位の時間がかかるため、当面は中国に強く出られない状況だといいます。

ロシアは、ウクライナ侵攻後の経済制裁とSWIFTからの排除により、原油や天然ガスの輸出先を中国に頼らざるを得なくなった。人民元決済に応じる形で、事実上「弟分」の立場を受け入れているというのです。

欧州は、トランプ政権との関係が不安定な中、アメリカと中国の両方を同時に敵に回すリスクを避けるための、いわば保険として中国に接近している、という分析でした。

それぞれの「弱み」が、接近の理由になっている

3つの大国、それぞれ異なる事情で中国に接近しているという構図を聞いて、私が感じたのは、「頼る理由」というのは、案外シンプルなものなのだということです。尊敬や信頼から接近しているのではなく、単に「これがないと困る」という弱みを突かれている。これは国家間の話ですが、個人の人間関係やビジネスの場面でも、よくあることのように思います。

対談では、こうした中で日本だけが中国の要求に安易に屈服しない姿勢を貫いている、という指摘もありました。その結果、中国政府から強い批判プロパガンダを受けているものの、欧米諸国はそれを額面通りには受け取っていない、という分析でした。

リタイア生活者として、何を考えたか

特定の一国・一つの資源への依存は、大国であっても弱点になる。 アメリカほどの大国であっても、レアアースという一つの資源への依存が、外交上の大きな弱みになっているという事実は、示唆に富んでいます。これはこのシリーズで何度も触れてきた「分散」というテーマの、また別の実例だと感じました。資産運用でも、エネルギーでも、そして国家間の関係でも、「これがないと立ち行かない」という一点依存は、いつか足元をすくわれるリスクになるのだと思います。

「頼られている側」の立場は、思ったより不安定。 中国は各国から頼られる立場にありますが、それは尊敬されているからではなく、単に利害が一致しているだけです。利害が変われば、この関係もすぐに変わり得る。人間関係でも、「頼られているから安心」と思い込むのは危ういことなのかもしれません。

流されない、という選択肢もある。 各国が利害から中国に接近する中、日本が独自の姿勢を貫いているという話は、率直に励まされるものでした。周囲の空気に流されず、自分の判断基準を持ち続けることの大切さは、国家の外交だけでなく、老後の資産運用や日々の人付き合いにも通じる教訓だと感じています。

おわりに

「北京詣で」という現象一つとっても、それぞれの国の事情を丁寧に見ていくと、単純な「中国の勝利」という話では終わらないことが分かります。表面的なニュースの見出しだけでなく、その背後にある「なぜ」を考える習慣を、これからも大切にしていきたいと思います。

ほかにも、こんな本があります

よろしければ、こちらもご覧いただけると嬉しいです。

『東から西へ ― 俳句のこころ、聖書のひかり ―』(村井弘 著)

大国同士の駆け引きを読んだあとで、静かな言葉に立ち返りたくなったときに開いている一冊です。これは私の義父の遺作です。

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『白内障手術体験記 ― 英国在住者が大阪で自費手術を受ける』(南晴人 著)

こちらも、66歳になってから経験した、暮らしの節目の記録です。

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『英国寿司ビジネス奮闘記(小説版)』全4巻(南晴人 著)

29歳でロンドンへ渡り、寿司ひとすじに35年。見習いから工場長、そして寿司教室までを描いた小説シリーズです。

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出典について

本記事は、ダイレクト出版が運営するサブスクリプション「パワーゲーム」内で配信された、北野幸伯さんとの対談(有料コンテンツ)を私が購入し、そこから触発されて書いた個人的な感想・考察です。対談内容そのものの転載ではなく、あくまで私自身の視点でまとめたものである点、ご了承ください。

北野幸伯さんについて 国際政治アナリスト。ロシア(モスクワ)留学の経験を持ち、「国家戦略」「地政学」の視点から世界情勢を読み解くメールマガジン・書籍を多数発信。ダイレクト出版のサブスクリプション「パワーゲーム」のメイン講師も務める。 ホームページ:rpejournal.com

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