対応:2026年8月号<第二部>①

先日、「中国共産党政権はいつ崩壊するのか」という、なんとも大きなテーマを扱った対談を聞く機会がありました。北野幸伯さんとの対談で、1991年に崩壊したソビエト連邦と、現在の中国共産党を比較しながら、独裁体制の寿命について考察する内容でした。

※本記事は、ダイレクト出版が運営するサブスクリプション「パワーゲーム」内で配信された、北野幸伯さんとの対談(有料コンテンツ)を私が購入し、そこから触発されて書いた個人的な感想・考察です。北野さんのホームページは rpejournal.com です。なお、本記事は対談者による分析・予測を扱ったものであり、確定した事実の報道ではありません。

このシリーズの記事

モスクワ、赤の広場に建つ聖ワシリイ大聖堂

モスクワ、赤の広場に建つ聖ワシリイ大聖堂(写真: Calvin fitra Anggara / Unsplash)。69年で幕を閉じたソビエト連邦の歴史を思い浮かべながら選びました。

「もう20年、同じ話を聞いている」

対談の冒頭、聞き手の方が「2006年頃からずっと『中国崩壊』と言われ続けているが、あの国は壊れない」と話していたのが、正直に言って一番印象に残りました。私自身も、投資を始めた頃からずっと「中国はいずれ崩壊する」という言説を、何度となく耳にしてきた記憶があります。

対談ではまず、「中国が崩壊する」という言葉の定義を丁寧に整理していました。ソ連が崩壊してもロシアという国は残ったように、中国が崩壊するとしても、それは国そのものが消えるという意味ではなく、「共産党による一党独裁体制」が終わるという意味だというのです。この整理は、私にとってはなるほどと思わされるものでした。漠然と「中国が崩壊する」という言葉を聞くと、つい国そのものが消滅するようなイメージを持ってしまいますが、実際にはそうではない、ということですね。

ソ連と中国、何が違ったのか

対談では、ソ連(1922〜1991年、69年間存続)と中国共産党(1949年建国、現在77年目)を、指導者ごとに比較していました。

最大の分岐点は、1978年の鄧小平による改革開放だったといいます。ソ連が最後まで計画経済に固執し、民生品の不足という形で国民生活が行き詰まっていったのに対し、鄧小平は「政治は一党独裁のまま、経済だけを資本主義化する」という路線を選び、その後40年に及ぶ高度経済成長の土台を作りました。

もう一つの分岐点は、ゴルバチョフと習近平のアプローチの違いです。ゴルバチョフは政治・言論の自由化(ペレストロイカ・グラスノスチ)に踏み切り、結果としてソ連解体を招きました。対談によれば、習近平氏はこの「失敗」を徹底的に研究し、むしろ逆方向、つまり言論統制の強化と終身体制化を選んでいるというのです。

ただし、その代償として経済成長率は、胡錦濤時代の年10%超から、習近平体制下では4%台まで低下しているといいます。選挙のない独裁体制では、経済政策の失敗を選挙で修正する仕組みがなく、失政の責任がすべて一人の指導者に集中してしまう、という指摘には考えさせられました。

リタイア生活者として、何を考えたか

「いつか崩壊する」は、投資判断の役には立たない。 20年近く「崩壊する」と言われ続けている、というエピソードは、率直に言って身につまされるものでした。仮に対談の分析が正しく、いずれ体制が終わるとしても、それが5年後なのか、30年後なのかは、誰にも分かりません。「いずれ終わる」という情報だけを根拠に、今の資産配分を大きく動かすのは危険だと感じました。むしろ大切なのは、いつ何が起きても大きく崩れない分散を、普段から保っておくことなのだと思います。

制度の「柔軟さ」は、意外と長期的な安定性に効いてくる。 鄧小平とゴルバチョフの対比を聞いて感じたのは、経済の柔軟性を保った体制の方が、結果的に長く存続したという事実です。これは国家の話ですが、個人の資産設計にも通じる教訓のように思います。一つのやり方に固執せず、状況に応じて調整できる余地を残しておくことが、長く続けるための鍵なのかもしれません。

「もしも」を考えることと、「今すぐ動くこと」は別問題。 このシリーズを通じて何度も感じてきたことですが、地政学的なシナリオを知っておくことと、それに基づいて今すぐ行動を起こすことは、分けて考える必要があります。中国関連の資産をお持ちの方であれば、こうした長期的な構造変化を頭の片隅に置きつつ、慌てず、少しずつ分散を進めていくのが現実的なのだろうと思います。

おわりに

「中国はいつか崩壊する」という言説を、20年近く聞き続けてきた身として、今回の対談は、その言説をやや冷静に整理し直す機会になりました。予測が当たるかどうかは分かりませんが、こうした長期的な視点を時々仕入れておくことは、老後の資産設計においても、決して無駄にはならないと感じています。

ほかにも、こんな本があります

よろしければ、こちらもご覧いただけると嬉しいです。

『東から西へ ― 俳句のこころ、聖書のひかり ―』(村井弘 著)

ソ連と中国という大きな歴史の話のあとで、静かな言葉に立ち返りたくなったときに開いている一冊です。これは私の義父の遺作です。

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『白内障手術体験記 ― 英国在住者が大阪で自費手術を受ける』(南晴人 著)

こちらも、66歳になってから経験した、暮らしの節目の記録です。

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『英国寿司ビジネス奮闘記(小説版)』全4巻(南晴人 著)

29歳でロンドンへ渡り、寿司ひとすじに35年。見習いから工場長、そして寿司教室までを描いた小説シリーズです。

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出典について

本記事は、ダイレクト出版が運営するサブスクリプション「パワーゲーム」内で配信された、北野幸伯さんとの対談(有料コンテンツ)を私が購入し、そこから触発されて書いた個人的な感想・考察です。対談内容そのものの転載ではなく、あくまで私自身の視点でまとめたものである点、ご了承ください。なお、本記事で紹介した内容は、対談者による分析・将来予測であり、確定した事実ではありません。

北野幸伯さんについて 国際政治アナリスト。ロシア(モスクワ)留学の経験を持ち、「国家戦略」「地政学」の視点から世界情勢を読み解くメールマガジン・書籍を多数発信。ダイレクト出版のサブスクリプション「パワーゲーム」のメイン講師も務める。 ホームページ:rpejournal.com

北野さんが講師を務める「パワーゲーム」講座の詳細はこちらです。

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