対応:2026年8月号<第三部>③

以前、プーチン政権が揺らぐ「シナリオ」について書きましたが、今回は同じロシア・ウクライナ情勢について、現時点の実際の戦況と停戦交渉の行方を扱った対談を聞く機会がありました。北野幸伯さんとの対談です。

※本記事は、ダイレクト出版が運営するサブスクリプション「パワーゲーム」内で配信された、北野幸伯さんとの対談(有料コンテンツ)を私が購入し、そこから触発されて書いた個人的な感想・考察です。北野さんのホームページは rpejournal.com です。

このシリーズの記事

ウクライナに焦点を当てた古い地図

ウクライナに焦点を当てた地図(写真: Hans / Unsplash)。生々しい戦況の映像ではなく、あえて抽象的な地図を選びました。

SNSの噂と、実際の戦況の違い

対談は、視聴者からの「SNSで『ロシアがウクライナ南部に大幅侵攻している』という情報を見たが本当か」という質問から始まっていました。これに対する回答が、地上戦と、それ以外の戦線を分けて考える必要がある、という整理でした。

地上戦では、確かにロシア軍がじわじわと押し込んでいるのは事実だという。しかしウクライナが圧倒的な劣勢に追い込まれているわけではない、というのが対談での見立てでした。

見えている戦争と、見えていない戦争

印象的だったのは、ウクライナが長距離ドローンを使って、モスクワやサンクトペテルブルク、クリミアの石油関連施設を連続攻撃しているという話です。この結果、ロシア国内ではガソリンが不足し、インドなどから輸入せざるを得ない事態になっているといいます。

以前、「もしプーチン政権が揺らいだら」という記事で、ドローン戦争が戦争の形を変えつつあるという「シナリオ」について書きましたが、今回聞いた内容は、まさにそのシナリオが現実の戦況として進んでいる話でした。派手な地上戦の報道の裏で、こうした補給線への攻撃という、見えにくい戦い方が続いているのだと知り、ニュースの見え方が少し変わりました。

「北方領土」がもう一つ増えるかもしれない

もう一つ、強く印象に残ったのが、停戦後の見通しについての話です。対談によれば、現在の前線で停戦した場合、ルガンスク州のほぼ全域、ドネツク・ヘルソン・ザポリージャ各州の7〜8割が、ロシアの実効支配下に置かれたまま固定化される可能性が高いといいます。

ウクライナはこの領土を割譲として認めないため、日本における「北方領土問題」のように、何十年も返還要求が続く、長期未解決の状態になるだろう、という見立てでした。この例えは、日本人の私にとって、とても分かりやすいものでした。北方領土問題がどれほど長く続いているかを思うと、今回の戦争もまた、簡単には終わらない問題として、これから長く付き合っていくことになるのかもしれません。

対談では、トランプ氏が現状の前線での停戦を提案したものの、プーチン氏が「危機の根本原因の排除」という新たな要求を持ち出し、交渉を自ら壊してしまった経緯も紹介されていました。プーチン氏の失脚や逝去がない限り、本当の意味での終結は難しいだろう、という指摘には、重いものを感じました。

リタイア生活者として、何を考えたか

「長引く問題」との付き合い方を、北方領土問題から学ぶ。 日本は北方領土問題を何十年も抱えながら、それでも日々の暮らしを続けてきました。今回の対談を聞いて、世界には「すぐには解決しないと分かっていながら、付き合い続けるしかない問題」がいくつも存在するのだと、改めて感じました。ウクライナ情勢についても、解決を待ち望みつつ、長期化を前提とした心構えを持っておく必要があるのだろうと思います。

見えている情報と、見えていない情報の両方を意識する。 派手な地上戦の報道の裏で、ドローンによる補給線攻撃という、あまり報道されにくい戦いが続いているという話は、情報の受け取り方について考えさせられました。目立つニュースだけを見て全体を判断せず、見えにくい部分にも意識を向けること。これは、資産運用の情報を読み解く際にも通じる姿勢だと思います。

エネルギー価格への影響は、引き続き注視が必要。 ロシア国内でガソリン不足が起きているという話は、このシリーズで繰り返し触れてきたエネルギー価格変動リスクの、具体的な一例です。中東だけでなく、ロシア・ウクライナ情勢も、エネルギー価格の変動要因として引き続き見ておく必要がありそうです。

おわりに

「北方領土」という日本人にとって馴染み深い例えを通じて、ウクライナ情勢の長期化を実感した対談でした。世界には、解決までに何十年もかかる問題が数多くあります。焦らず、しかし関心は持ち続けながら、これからも情勢を追っていきたいと思います。

ほかにも、こんな本があります

よろしければ、こちらもご覧いただけると嬉しいです。

『東から西へ ― 俳句のこころ、聖書のひかり ―』(村井弘 著)

長引く問題との付き合い方を考えたあとで、静かな言葉に立ち返りたくなったときに開いている一冊です。これは私の義父の遺作です。

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『白内障手術体験記 ― 英国在住者が大阪で自費手術を受ける』(南晴人 著)

こちらも、66歳になってから経験した、暮らしの節目の記録です。

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『英国寿司ビジネス奮闘記(小説版)』全4巻(南晴人 著)

29歳でロンドンへ渡り、寿司ひとすじに35年。見習いから工場長、そして寿司教室までを描いた小説シリーズです。

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出典について

本記事は、ダイレクト出版が運営するサブスクリプション「パワーゲーム」内で配信された、北野幸伯さんとの対談(有料コンテンツ)を私が購入し、そこから触発されて書いた個人的な感想・考察です。対談内容そのものの転載ではなく、あくまで私自身の視点でまとめたものである点、ご了承ください。

北野幸伯さんについて 国際政治アナリスト。ロシア(モスクワ)留学の経験を持ち、「国家戦略」「地政学」の視点から世界情勢を読み解くメールマガジン・書籍を多数発信。ダイレクト出版のサブスクリプション「パワーゲーム」のメイン講師も務める。 ホームページ:rpejournal.com

北野さんが講師を務める「パワーゲーム」講座の詳細はこちらです。

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