対応:2026年8月号<第三部>②

前回の記事に続き、今回も中国との付き合い方をテーマにした対談です。今回は、東南アジア諸国が中国・ロシア・北朝鮮といった、価値観の異なる大国とどう付き合っているのかを読み解く内容でした。北野幸伯さんとの対談です。

※本記事は、ダイレクト出版が運営するサブスクリプション「パワーゲーム」内で配信された、北野幸伯さんとの対談(有料コンテンツ)を私が購入し、そこから触発されて書いた個人的な感想・考察です。北野さんのホームページは rpejournal.com です。

このシリーズの記事

ベトナム・ムイネー漁港に並ぶ色とりどりの漁船

ベトナム・ムイネー漁港に並ぶ漁船(写真: Margo Evardson / Unsplash)。冬の間に巡っている東南アジアの港町の風景を思い浮かべながら選びました。

冬の旅先が、対談のテーマになっていた

私は冬の間、日本に加えてタイやフィリピン、台湾、韓国といったアジア各国を巡る生活をしています。今回の対談は、まさにそのフィリピンやベトナムを含む東南アジア諸国が主題だったので、いつも以上に身近に感じながら聞きました。

「儲かるけど怖い」という二面性

対談ではまず、東南アジアにとっての中国が持つ二面性が説明されていました。中国は東南アジアにとって最大の貿易相手であり、経済的な恩恵は大きい。しかし同時に、南シナ海の「九段線」を巡る主張は、フィリピンやベトナム、マレーシアなどの主権を脅かす、安全保障上の最大の懸念材料でもあるというのです。

だからこそ東南アジア諸国は、経済では中国と良好な関係を保ちつつ、安全保障ではアメリカとの関係も維持するという、いわば「両天秤」の外交を徹底しているといいます。

なぜロシアや北朝鮮とは対立しないのか

対談で興味深かったのは、東南アジアがロシアや北朝鮮とはあえて対立しない理由についての説明でした。地理的に離れており、直接の脅威にならないから、わざわざ関係を悪化させる必要がない、というのです。自国にとっての「本当の脅威」を見極め、それ以外の相手とは無理に対立しない。この割り切り方には、なるほどと思わされました。

一国では勝てないから、束になる

もう一つの柱は、「合従連衡」という古代中国の故事にちなんだ話でした。東南アジアの小国が、単独では巨大な中国に太刀打ちできないことを自覚し、10カ国でASEANとしてまとまることで、一定の自立性を保っているというのです。

対談の後半では、これが日本にとっても示唆に富む教訓だと語られていました。日本一国で中国に対抗することは現実的ではない。フィリピン、ベトナム、インド、オーストラリア、欧州といった国々との関係を強化し、多角的な「仲間づくり」を進めることが、勢力均衡を保ち、結果的に戦争を防ぐことにつながる、という話でした。

リタイア生活者として、何を考えたか

「一つの相手」に全てを賭けない、という知恵。 東南アジア諸国のバランス外交は、経済的な利益と安全保障上のリスクを、同じ相手から同時に受け取っている状況への、現実的な対処法だと感じました。これは、私自身の資産運用にも通じる発想です。魅力的な投資先であっても、リスクも併せ持つ相手には、全資産を委ねるのではなく、常に複数の選択肢を持っておくことが大切なのだと、改めて感じました。

脅威を見極め、無理に敵を増やさない。 東南アジアがロシアや北朝鮮と無理に対立しない、という割り切り方も、示唆に富んでいました。全ての懸念事項に同じだけのエネルギーを注ぐのではなく、自分にとって本当に重要な問題を見極め、そこに集中する。これは、限られた時間と体力の中で暮らすリタイア生活者にとっても、参考になる考え方だと思います。

複数の「居場所」を持つことの強さ。 ASEANが10カ国で結束することで自立性を保っているという話は、個人の生き方にも当てはめられるように思います。一つのコミュニティ、一つの人間関係だけに依存するのではなく、複数の居場所や繋がりを持っておくこと。日英2拠点、そしてアジア各国を巡る暮らし方は、まさにこの「複数の居場所を持つ」という発想を、無意識のうちに実践していたのかもしれません。

おわりに

普段旅している国々が、こうした形で世界の力学に組み込まれていることを知ると、旅の見方も少し変わってくるように感じます。次にアジアを訪れる際は、こうした背景にも思いを馳せながら歩いてみたいと思います。

ほかにも、こんな本があります

よろしければ、こちらもご覧いただけると嬉しいです。

『東から西へ ― 俳句のこころ、聖書のひかり ―』(村井弘 著)

冬に旅する東南アジアの港町を思い出しながら、静かな言葉に立ち返りたくなったときに開いている一冊です。これは私の義父の遺作です。

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『白内障手術体験記 ― 英国在住者が大阪で自費手術を受ける』(南晴人 著)

こちらも、66歳になってから経験した、暮らしの節目の記録です。

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『英国寿司ビジネス奮闘記(小説版)』全4巻(南晴人 著)

29歳でロンドンへ渡り、寿司ひとすじに35年。見習いから工場長、そして寿司教室までを描いた小説シリーズです。

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出典について

本記事は、ダイレクト出版が運営するサブスクリプション「パワーゲーム」内で配信された、北野幸伯さんとの対談(有料コンテンツ)を私が購入し、そこから触発されて書いた個人的な感想・考察です。対談内容そのものの転載ではなく、あくまで私自身の視点でまとめたものである点、ご了承ください。

北野幸伯さんについて 国際政治アナリスト。ロシア(モスクワ)留学の経験を持ち、「国家戦略」「地政学」の視点から世界情勢を読み解くメールマガジン・書籍を多数発信。ダイレクト出版のサブスクリプション「パワーゲーム」のメイン講師も務める。 ホームページ:rpejournal.com

北野さんが講師を務める「パワーゲーム」講座の詳細はこちらです。

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『[新版]日本の地政学 (扶桑社BOOKS) 北野 幸伯 (著)』 キンドル版はこちら 単行本はこちら

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