対応:2026年8月号<第一部>④

先日、今年2月に始まった米・イスラエルとイランの戦争、そしてその後の停戦交渉について解説した対談を聞く機会がありました。北野幸伯さんとの対談で、6月に結ばれた「米国とイランの戦闘終結に関する合意覚書」を、条項ごとに詳しく読み解く内容でした。

※本記事は、ダイレクト出版が運営するサブスクリプション「パワーゲーム」内で配信された、北野幸伯さんとの対談(有料コンテンツ)を私が購入し、そこから触発されて書いた個人的な感想・考察です。北野さんのホームページは rpejournal.com です。

🎧 対談で聴く(二人が語り合う、この記事の感想・解説)

この音声は、本文の内容をもとにGoogle NotebookLM(Gemini)が生成したAI音声解説です。二人のキャスターが感想や解説を交えて語り合う対談形式の音声で、本文をそのまま読み上げるものではありません。

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中東地域の地図

中東地域の地図(写真: Emin Huric / Unsplash)。ホルムズ海峡を巡る封鎖と解放が繰り返された、今回の米イラン合意を思い浮かべながら選びました。

「トランプの完敗」という評価

対談で語られていたのは、こんな内容でした。

今年2月28日、米国とイスラエルがイランを攻撃し、戦争が始まりました。6月に入り、両国は戦闘終結の覚書に合意・署名します。ホルムズ海峡が「解放された」と報じられましたが、そもそも開戦前のホルムズ海峡は封鎖されていませんでした。つまり、多大なコストを払った末に、単に開戦前の状態へ戻っただけだというのです。

さらに覚書の条項を細かく見ていくと、内容はイラン側に大きく有利なものでした。凍結資産の解除(約1,200億ドル、日本円で約2兆円)、原油・石油製品の輸出解禁、そして最大3,000億ドル(約48兆円)規模の経済復興計画の策定まで盛り込まれています。一方、最大の焦点だったはずの核開発問題については、「核兵器を開発しないことを再確認する」という言葉だけにとどまり、具体的な検証措置は先送りされました。北朝鮮との交渉と似た構図だという指摘には、なるほどと思わされました。

対談ではこれを「トランプ政権の完敗」と評していました。背景には、11月に控えるアメリカの中間選挙があったといいます。ホルムズ海峡の混乱が続けばガソリン価格が上がり、インフレが進み、選挙に不利になる。その焦りが、これほど譲歩的な合意につながったという見立てでした。

対談を聞いた後、少し調べてみたこと

ここまでは対談の要約ですが、実際にこの合意がその後どうなったのか気になって、自分でも少し調べてみました。すると、合意はわずか3週間ほどで事実上崩壊していたことが分かりました。トランプ大統領は合意から間もなく「It's over(もう終わりだ)」と発言し、米軍による大規模な空爆が再開、イラン側もホルムズ海峡を再び封鎖したということです。

対談の中では、この破綻の時期が「4月」と語られていましたが、実際の報道を確認すると、破綻したのは7月のことでした。開戦が2月、覚書署名が6月ですから、時系列としても7月の方が自然です。おそらく音声を聞き取る過程で、聞き間違いが生じたのだろうと思います。有料の対談コンテンツとはいえ、人が話している内容である以上、こうした細かな誤りはどうしても起こり得るものです。今回は自分で一次情報にあたることで気づけましたが、こうした「念のため確認する」という一手間は、対談やニュースを鵜呑みにしないために、これからも大切にしたい習慣だと感じました。

リタイア生活者として、何を考えたか

エネルギー価格の変動は、やはり他人事ではない。 ホルムズ海峡は世界の原油輸送の要所です。今回のように封鎖と解放が繰り返される状況は、そのたびに原油価格や物価に影響を及ぼします。中東情勢がどう転ぶにせよ、エネルギー価格の急変動に備えておくことの大切さは、これまでのシリーズでも繰り返し感じてきたことですが、今回の一件でさらに実感を強めました。

「勝ち負け」という評価そのものを、少し距離を置いて見る。 対談では「トランプの完敗」という表現が使われていましたが、これはあくまで一つの評価軸です。同じ合意内容でも、「戦争を早期に終わらせた成果」という見方をする人もいるでしょう。国家間の合意を「勝った・負けた」という単純な物差しだけで判断するのは、実は危ういことなのかもしれません。これは資産運用の情報にも通じる話で、「これで儲かる」「これは危ない」という断定的な物言いほど、一呼吸置いて自分で調べてみる価値があると思っています。

一次情報にあたる手間を惜しまない。 今回、対談の中の日付の誤りに気づけたのは、実際に自分で検索して確認したからです。66歳になり、情報を右から左に受け流すのではなく、気になった点は自分の手で確かめる。この一手間は、資産を守ることにも、認知機能を保つことにも、両方の意味でつながっているように思います。

おわりに

「トランプの完敗」という刺激的な評価から始まった対談でしたが、調べてみると、合意そのものがわずか数週間で崩れていたという、さらに厳しい現実が見えてきました。世界情勢は、聞いた話をそのまま受け止めるだけでなく、気になったところは自分でも確認してみる。そんな姿勢を、これからも大切にしていきたいと思います。

ほかにも、こんな本があります

よろしければ、こちらもご覧いただけると嬉しいです。

『東から西へ ― 俳句のこころ、聖書のひかり ―』(村井弘 著)

情報を鵜呑みにせず自分で確かめるという今回の話の締めくくりに、静かな言葉であらためて開きたくなる一冊です。これは私の義父の遺作です。

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『白内障手術体験記 ― 英国在住者が大阪で自費手術を受ける』(南晴人 著)

こちらも、66歳になってから経験した、暮らしの節目の記録です。

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『英国寿司ビジネス奮闘記(小説版)』全4巻(南晴人 著)

29歳でロンドンへ渡り、寿司ひとすじに35年。見習いから工場長、そして寿司教室までを描いた小説シリーズです。

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出典について

本記事は、ダイレクト出版が運営するサブスクリプション「パワーゲーム」内で配信された、北野幸伯さんとの対談(有料コンテンツ)を私が購入し、そこから触発されて書いた個人的な感想・考察です。対談内容そのものの転載ではなく、あくまで私自身の視点でまとめたものである点、ご了承ください。なお、対談内で語られた一部の日付については、公開情報との照合により、本文中で補足・訂正しています。

北野幸伯さんについて 国際政治アナリスト。ロシア(モスクワ)留学の経験を持ち、「国家戦略」「地政学」の視点から世界情勢を読み解くメールマガジン・書籍を多数発信。ダイレクト出版のサブスクリプション「パワーゲーム」のメイン講師も務める。 ホームページ:rpejournal.com

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